プロジェクトストーリー:日本一を作るということ。

海物語。パチンコをする人はもちろん、パチンコをしない人でも、テレビCMや街のポスターで見かけたことはあるだろう。

1999年に発表されるとたちまち大ヒットを記録、全国のホールを埋め尽くしたパチンコ業界屈指の人気シリーズである。

IREMは、このシリーズの映像制作をずっと手がけてきた。海物語はシリーズを重ね、新プロジェクトもすぐに決まる。ヒットしたからこそのシリーズ化だが、だからこそ絶対に成功しなければいけない。プレッシャーも大きいが、それ以上にやりがいのあるプロジェクトが始まった。


新しい海物語 誕生のきっかけ。

「日本の伝統を舞台にした海物語を創りたい」
本プロジェクトに対するクライアントの想いを聞いた瞬間だった。

「これはとてつもなく難しいプロジェクトになる…」。
最初に感じた印象は全員が一致していた。


日本の伝統って何だろう!?

「日本の伝統と一言で言っても色々ありますから、何をコンセプトにするか非常に苦労しました(Y.T.)」。

事実、クライアントとの打ち合わせは連日連夜に及んだ。
日本舞踊・歌舞伎・俳句・茶道・お祭り・書道・華道・寿司・天ぷら・侍・忍者・秋葉原?…ありとあらゆる提案を捻出し、一つ一つの内容を掘り下げては捨てる日々であった。

コンセプトによってプロジェクトの明暗が大きく左右するため、失敗は絶対に許されない。緊張感漂う打ち合わせの中、IREMもクライアントもとにかく意見を出し続けた。

考えに考え抜いて導き出した答えが、【動の日本】と【静の日本】を創るといった内容だった。

【動の日本】は活気ある日本のお祭り表現することを、【静の日本】は豊かな日本の四季の中に雅さを表現することをコンセプトとすることにようやく決定した。

コンセプト確定の日、全員から歓喜の声が挙がった。
必死で考え、納得のいく結論を導き出した証拠である。

「コンセプトは決まっても、まだここがスタートラインですからね(H.T.)」
「そう!これを海物語にどうやって落とし込むかが一番重要だからね(Y.T.)」

コンセプトは決まった。後は前進あるのみ。


妥協なき打ち合わせ。

コンセプト決定後も、クライアントとの打ち合わせは終わらない。むしろドンドンと加速していく。
当時を懐かしむかのように語るR.O.「朝から夜まで本当に連日打ち合わせしましたよね」。

開発初期は、予告・リーチ・大当り中演出と決めなければいけない仕様が山のように存在する。
コンセプト決定時と同様、まずは各仕様の提案を大量に行うところから始まる。
IREMとクライアントが出し合った仕様の総数は、軽く数百を超える。
この中から、プロジェクトにとって本当に必要な仕様を選出していくのだが、膨大な数との戦いもあり、決定という名のゴールに辿り着くことは至難の技であった。

そんな遠いゴールを目指す作業の最中、時にはクライアントと意見がぶつかることもある。
お互いに少しでも面白いものを創りたいという気持ちからくるもので、妥協することは微塵もない。

「一つの予告を決めるのに何時間もかかったよね(H.T.)」
「(打ち合わせ中に)”雅さ”や”活気”って単語を毎日100回以上は言っていた気がします(笑)(K.I.)」
Y.T.も続く「今思えば本当によく終わったなって思うよ(笑)」

微塵の妥協もなく、膨大な数との戦い乗り越え、IREMとクライアントはプロジェクトに必要な仕様を全て出し切った。


説得×納得×説明会。

創るものが決まったら、開発現場への説明会を経て本開発が始動する。チームディレクターのY.T.より開発メンバー全員にプロジェクトの説明会が実施された。

Y.T.からの説明が終わるとすぐに多数の意見が湧き起こった。
「なんでこの演出なの?」
「この予告の意図がよくわからないんだけど…」
など、発生した意見はプラスなものばかりではない。

より良いものを創るためには、開発メンバーを「説得」するのではなく、開発メンバーに「納得」してもらう必要がある。

「結局、その場では収集がつかなくて個別での説明会もやったよね(Y.T.)」
「説明会だけで結構時間を使っちゃったけど、みんなからの積極的な意見ももらえたのでやりがいはありました(R.O.)」

「納得」の説明会が終了し、ついに本開発がスタート。


自然はデザイナーに厳しい。

しっかりとした演出仕様やデザインサンプルがあっても、商品レベルのデザインを創ることは容易ではない。
デザインリーダーとして、今までも数々のデザイン物を統括してきたH.T.主導でデザイン制作が始まる。

「今回は、日本の四季やお祭りの活気を表現するのにすごく頭を抱えました(H.T.)」
「そうですね、さらにパチンコのゲーム性に落としこむ必要もありますしね(K.I.)」

【動の日本】と【静の日本】を高品質で再現しつつ、パチンコとしてのゲーム性を実現することは困難を極めた。

中でも一番調整に時間を要した内容として、【静の日本】を表現する際の「自然物」が挙げられる。
四季を表現するにあたり、「自然物」を取り入れることは必要不可欠であった。

「春:芽吹いたばかりの草花」、「夏:日差しを浴びた海の波」、「秋:実り豊かな稲穂」、「冬:草木に降り積もる雪」など「自然物」は人工的な建造物とは異なり、表現方法に一定の決まりがない。

膨大な資料や写真を確認しながら、少しずつ制作を行うしか手段はないのだ。

資料や写真だけの情報で足りないと感じる時は、休日を利用して「自然物」の確認のため、県外に赴く担当者も存在した。

「制作中は夢中でしたけど、今思えば大変だったな~ クライアントがOKしてくれてもH.T.さんはOKしてくれないし(笑)(K.I.)」
「だって、まだまだ良くなりそうだったから…。妥協は敵だよ(笑)(H.T.)」
「ライン全体を見るディレクターとしてはすごい頼もしかったです!(Y.T.)」

デザイン制作は一歩一歩確実に進んでいき、ある程度の量のデザインデータが出来上がった。これからはデザインデータに制御を組み込むソフトの出番である。


ソフトの限界。

プロジェクトが後半に差し掛かると、ソフトリーダーR.O.中心に制御の組み込みが行なわれた。

ソフト制御の組み込みは、デザインデータが出来上がった後の作業となるため、開発中盤~後半で本格始動する事となる。
作業工程が後ろになる分、スケジュールの調整が非常に難しくなる。

その時に事件は起こった。
図柄の動きがおかしい!?

予定していた制御を出来上がったデザインデータに組み込んだところ、想定していた動きとは違う動きをしたのだ。調査の結果、制御の根幹の部分に誤りがあることが分かった。

開発は中盤を超えている。
が、まだ作り直すことは出来る。

R.O.主導のもと、ソフトスケジュールが大幅に見直された。各演出の人員アサインの変更、社内ソフト調整期間の圧縮など。R.O.自身も制御作成に加わり、一気に組み上げていった。
すべての制御組み込みが終了したのは完了予定日、当日のことであった。

「演出の物量も多くて、想定外の事件もあったから、制御の組み込みの時はかなり焦りました(R.O.)」
「あの時は間に合わなかったらどうしようかとドキドキしたよ(Y.T.)」
「Y.T.さんに頼んで、クライアントに謝りの連絡を入れてもらおうかと思いました(笑)まぁ、それは冗談ですけど、自分の中ではソフトの限界に挑んだようなプロジェクトでしたね!(R.O.)」

制御組み込みも終わり、IREMとしては一旦の完了を迎えた。
あとはクライアント担当者と共に最終調整を残すのみとなる。


嘘でしょ!からの完成!!

データマスターの数週間前、クライアント社内で「試打会」が実施された。「試打会」とはプロジェクトの担当以外の社員が評価を兼ねて行うもので、幅広い意見を取り入れるために行うものである。場合によっては、その意見によって大きな調整が発生することもある。

試打会の結果が、クライアントより伝えられた。
「大変言いづらいのですが、リーチを丸ごと二本変更できますか?」
目の前が暗くなり、倒れそうになった。データマスターの日程まで残り数週間、通常であれば無謀な内容であった。

「話を伺った時は嘘でしょ!って思いました。リーチの内容によっては制作に数か月かかる場合もありますからね(K.I.)」
「自分もすごい焦った覚えがあるなぁ。さらに良くなりそうな内容だったから、調整した方がもちろんいいと思ったけど、時間的にも体力的にもギリギリだったからね(H.T.)」

さっそく、IREMの全プロジェクトメンバーを集めての検討会議が行われた。
議題は【どうすれば作ることが出来るか】だ。データマスターはもう目の前、出来ない理由ではなく、出来る手法を検討・討議した。

結論が出た。それは、今まで制作してきた全データを洗い出し、今回のリーチに適用できそうな内容をピックアップすることで、新規に制作するデータを最小限に抑えるという手法だった。
全データとなればデータ量は途方もない数に及び、洗い出し作業と簡単に言っても一筋縄ではいかないのは承知で実施することとした。

その他にも、データ制作の途中で、ディレクター/デザインリーダー/ソフトリーダーが、数時間置きにチェックを行う体制をとり、出戻りを極限まで抑え込むことも並行して行うこととした。

これが残り数週間で行えるギリギリの手法であった。

激動の数週間を走り切り、プロジェクトは完了を迎える事となった。



プロジェクトを通して。

プロジェクトを通して感じたことを、改めてメンバーに語ってもらった。

Y.T.ディレクターとして初めて担当したプロジェクトであり、やりながら色々なことを学べました。本当にクライアントも含めて「みんなで創れた海物語」だと感じています。

H.T.【動の日本】は、「お祭り」ってキーワードと結びつけて考えられたので、デザインとしても方向性が確立しやすかったけど、【静の日本】で「雅」って人によって感じ方が違うので、表現が本当に難しかったです。何回か妥協しようかと思ったこともあったけど、稼働している所をホールで見ると、妥協しなくてほんと良かったなって感じてます。

R.O.面白さを追求した事で、制御にはいくつもの難題がありました。しかし、それらを打開していく事が自身の成長と満足いく制作に繋げられたと思います。

K.I.デザイナーとして初めて海物語に携わりました。制作時は難しい箇所もありましたが、その分スキルも確実に上がったと感じます。既存の海シリーズに負けない良いものが出来上がったと思います。是非とも多くの方に遊技して欲しいです。


全員が力を出し切り、今回のプロジェクトを完了させることができた。次のプロジェクトでは、今回の経験を糧にさらに面白いものを追求していくことだろう。IREM社員の探究心に終わりはない。

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