Pの記憶
  「桜坂消防隊」の完成までを、おなじみPが振り返ります。
ご用とお急ぎでない方はどうかお読みください。


企画書の記憶
さまざまな試行錯誤の末にたどり着いた開発の成熟期の開始時に、私自身が用意した企画書。
企画書としてはかなり未熟で恥ずかしいが、最終回という事で思い切って掲載を決めた。


1.タイトル
この企画書で、「桜坂消防隊」というタイトル名を打合わせの場で初めて披露した。
当時は「業火に挑みし者達」というサブタイトルが付いていた。サブタイトルは、ストーリー性が感じられるようにとの意図からであった。
タイトル文字のバックに桜の花弁を入れているのも、表紙から、「桜」を強く感じさせたかったからである。ある意味、私の決意表明でもあったのである。

2.ストーリー
ストーリーといっても、私が入れたいと思っていた内容のみの記載。
とにかく「桜」というものを強調したかったために、「桜」に始まり、「桜」に終わるという設定にこだわっていた。
当時既に、第一現場で兄を失うという流れは確定していたので、冒頭は、一年後の桜の中で兄を思い出すシーンと決定していったのである。
尚、キャラクターの名前は、昔の名前で書かれている。この後、殆どの名前は、私の独断で変えて行き、現在の形となったである。

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3.キャラクター設定画面
実は、これが一番恥ずかしい部分である。
タイトルに「桜」を付け、「花」を前面に出そうとしていたのである。最初に、各隊員の花を設定し、その花言葉に応じて成長して行くというシステムである。
さすがに、消防士とのかみ合わせが悪いと評判が悪かった。プレイヤーそれぞれの消防隊になったら面白いなという狙いであったのだが、今見ると、「花言葉はないよな」って自分でも思うのである(笑)
その後、最初は指示に従わない隊員が、プレイ状況に応じて次第にプレイヤーを認めるようになり、指示に従うようになって行くという話もでたが、今回のゲームには成長システムがそぐわないとの判断によりなくなっている。

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4.指示画面の記憶
当時の課題は指示画面の面白さを、どうわかりやすく視覚化するかという点であった。
その苦闘が記されている。行き先を矢印で結んだり、追従隊員はラインで結んだりしてなんとか視覚化しようともがいている。
初めて指示画面で各隊員の移動ルート表示を見た時は、正直感動ものであった。サブウインドウにおいては、5つ同時表示となっている。これは6人の消防士が同時に活動する事を意味しているが、現実性に乏しく、現在のような切替式のサブウインドウに決定し、隊員も自分をいれて最大4人となった。

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隊員達の記憶
隊員達が署内で見せる、心温まる何気ないやりとり。
火災現場での厳しいやりとりと対照的に、日常を垣間見る思いがして私はかなり気に入っている。
今でも印象に残っているセリフ達と共に当時を振り返ってみたいと思う。


1.「心、折っちまうんじゃねえぞ」
ある日の、署内での堀越のセリフ。
仕上がってきた脚本のこのセリフを見て、私はボイスを入れる決心した。当時、署内画面に関してはテキストのみの仕様であった。
開発も終盤に差しかかろうとしている時期、その仕様変更は意外と大きなものだった。スケジュール的には、何かを削らなくてはならない可能性も出てきていた。それでも、私はどうしても聞きたかった…このセリフを、肉声で。私にとっては、無理してでもボイスを入れたいと強く思わせた名セリフなのである。

2.「緒方ちゃんって、おまえな…」
沙耶と大地とのやりとりの1コマ。
この一言で、沙耶と大地の微笑ましい関係が感じらる、私のお気に入りのセリフである。
深夜に及んだゲーム内容チェック中、このセリフを聞く度に心温まる思いをしていた事を思い出す。そして、恋人ではなく友人としてお互いが必要である、という2人の関係もよく出ている。まかり間違って、2人が付き合う事になっても、絶対に続かない事も彷彿とさせる。沙耶とうまく行くのは間違いなく中津川だろうと勝手に思っている、今日この頃である。

3.「それでいいと思うの、人間だから」
千鶴が大地を思いやる一言。
千鶴の母性と知性が感じられる、ある意味哲学的なセリフでもある。特別変わったセリフではないかもしれないが、さりげない優しさがにじみ出ているようで忘れられない。
また、なぜかこのセリフの倒置法も気に入っている。日常生活の中で、こんなセリフを吐く場面なんてそう多くはないとは思うが、いつ使おうかな…そんな思いにさせたセリフでもある。

4.「だから俺は、ここが好きなんだ」
署内での大地と千鶴の会話。
私はこのセリフが本当に好きである。冷静に考えれば、職場が好きな理由としては随分子供じみている。でも、こう言い切ってしまえる大地と、そう言わせてしまう桜坂消防署の両方にある種の感慨を持ってしまうのである。
疲れきった体に、染み入るように響いたこのセリフ。
「こんな気持、しばらく忘れていたよな…」
私は、しばしそんな感傷に浸る事で乗り切って来たような気がする。


火災現場の記憶
火災現場では、さまざまなアクシンデントが巻き起こる。
開発中において、いろいろ追加・修正し、現在の形になっていった。


1.倒れる棚
現場には、倒れてくる棚があるが、私はこれが非常に好きである。
最初、何気に破壊していると棚が倒れてきて本当に驚いた。失敗した時のペナルティがあまりにも少なすぎるとの見解から、ダメージを喰らうように修正した。
ただ、棚が倒れてきてダウンして力尽きてしまうのは、消防士としてあまりにもカッコ悪すぎるのではとの圧倒的な意見により、失敗しても、ライフが「0」にはならない仕様となっている。

2.2人押しの障害物
元々、第2現場から登場する予定であった。
私はどうしても体験版の範囲に入れたいと思い、「桜坂製作所 研究管理棟2階」に無理やり入れた。初めての共同作業ともいうべき、隊員との協力が必須となる最初の場面は、何があっても体験版に入れたかったのだ。

それでも当初は、指示をしないと押さないという仕様であったために、とんでもなく評判が悪かったのだ。「役に立たない隊員なんかいらない」と散々言われたのである。もちろん修正し、近くに隊員がいれば自動的に協力するようになっている。

3.吹き飛ぶドラム缶
第一現場から登場するトラップの1つ。
開発現場では「ドラム缶ロケット」と命名されていたようだ。せっかく飛ぶんなら、キャットウォーク上にも落とそうというという事で、そういう設定も入れている。
下から律儀にキャットウォークに落下するドラム缶に、私は「仕事を正確にこなす優秀な部下」を連想した憶えがある。

4.降り注ぐ瓦礫
瓦礫が降り注ぐというアイデアは大分初期からあったのだが、それを仲間隊員が除去できるようにしてはどうかという話が出た時に、私は素直にそれは面白いと思った。…と同時に、そこでゲームオーバーと思わないかが心配でもあった。
実際でき上がってみると、そういう心配は一切不要で、逆に近くにいる仲間隊員が助けてくれた時は、仲間の絆を強く感じるという優れたトラップとなった。最初の現場では、大した痛手にはならないが、後半面ではマジに痛い。近くに隊員がいない時は、かなりの時間のロスになってしまうのである。


消防署内の記憶
各火災現場の活動終了後に出て来る、桜坂消防署内。
この画面では、私の嗜好がよく出ているのではないかと思う。


1.報告書
各火災現場の活動を、報告書という形で見ることができる。
実際の報告書は良く知らないのだが、現実感のあるものにして欲しいと依頼した。だから、報告書自体は決して派手なものではないのである。
第一現場「桜坂製作所」の報告書は、大地を思いやる中津川が書いている。これも、終盤まで記入者が大地となっている事に気付かず、慌てて修正した想い出がある。

2.新聞記事
開発当初から、新聞記事を出したかった。
もちろん紙名は安直だが「桜坂新聞」。当初は、メニューに「新聞記事」という項目があったが、最終的に「報告書」の項目に入れる事となった。
でも、この新聞記事のグラフィックは、かなり気に入っている。あまりにも気に入って、一時、桜坂新聞の新聞記者を登場させようしたが、ストーリー的にうまくまとまらず実現はしなかった。

3.eメール
パソコンで見る事のできるeメール。
きっかけは、ストーリーに登場するeメールを実際に読めるようにしようという事であったが、せっかく作るんならと、いろんなメールを作成した。連帯感を出すために、隊員達から、現場の活動についての指摘やアドバイスメールも入れようとしていたが、そういう大事な内容をメールでやりとりするのは、消防士らしくないとボツになった。アドバイスなどは、ゲームオーバー時の任務失敗画面で表示する事となったのである。

4.隊員名簿
正直これが一番やりたかったのかもしれない。
隊員達への感情移入を増すためにも、名前とプロフィールの掲載をぜひやりたかった。
署内にいる隊員と現場での隊員がリンクしなければ、このゲームの半分は失ってしまうと思っていたからだ。
ガランとした署内に、隊員達を配置すると、見違えたように署内が活気付き、子供のようにワクワクした事を思い出す。そう言えば、土井が負傷しているにも関わらず、署内で元気にいるという笑えないバグというかミスがあった…危なかった(笑)。

消防車両達の記憶
応援要請によって要請を行なう事ができる、さまざまな消防車両達。
要素としてはあったものの、ビジュアル的に完成したのは終盤近くになってからであった。


1.ポンプ車
一番早くから存在していたのは、ポンプ車である。
開発中は車両自体が表示されておらず、向かいのビルや、外の地面から水が吹き出していた(笑)。
到着した時などに、サブウインドウでその雄姿を見せたかったのであるが、諸般の事情から、部屋内の放水先を表示する事となった。
それでも、一部の場所からは、見回し視点で見ることができる。

2.消防ヘリ
これも開発中は、空中から水が吹き出していた(笑)。
実際にヘリのモデルが入り、見回しモードで見た時は、得も言われぬ感動があった。
「うわっ、ホントにへりが放水してる!」
おめでたいヤツと言われるかもしれないが、当時、私は何度も見て楽しんだのだ。
他の場所に移動させると、ちゃんと向きを変え空に帰って行く…堪らなかったのだ。
最初に登場する時に、三木が勝手にヘリを呼ぶように修正を入れたが、ぜひユーザーの方に見て欲しいという、私の強い思いからであった。

3.ハシゴ車
当初ハシゴ車は、後半でしか登場しなかった。
とにかく見過ごしがちになってしまう各種車両の存在を前面に出したいと常に考えていた。
そして、最初のハシゴ車の登場を現在の現場にし、またハシゴ車を呼べるフロアでは、救助部隊の存在をなくしてもらったのである。
ハシゴ車を要請しないと要救助者の救出ができなくなる事で、応援要請の戦略性も上がると考えたのだ。
これで普通の人なら、絶対一回はハシゴ車を見るはず…それが私には嬉しかった。

4.消防ロボット
元々消防ロボットが登場する現場は、隊員達が署内での制服姿で、焼け跡の検証を行なうという予定であった。
開発サイドから、消防ロボットを登場させたいとの話があった時は、不覚にも驚いてしまった。恥ずかしい話、そんなものが、現実に存在するとは知らなかったのである。
そして、これが実際にはリモコン操作によるものだとわかったのは、更に先の事だったのである。

ゲームシステムの記憶
開発においては、ゲームシステムがいろいろと変遷して行った。
現在の形になるまでの事を思い起こしてみたいと思う。


1.黎明期
当初からあった指示の要素は、まだ「待機」と「追従」のみという簡素な物で、殆ど、プレイヤー1人でプレイするアクションゲームという形態に留まっていた時期である。当時は、放水方向も上下左右自由に操作でき、天井の炎を狙う面白さはあったが、

「爽快感のないガンシューティング」

というありがたくもない評価をもらっていた頃である。唯一評価されたのは、要救助者を担いで救出する点だけであったのである。

2.転換期
ある事がきっかけで、マップを使用した指示システムが考案された。そのシステムが導入された最初の状態である。当時は、上空視点で、隊員達がかなり小さく表示され、見た目が地味であった。
しかし、仲間隊員の活動を、視点移動する事で見る事ができる点はある意味新鮮であった。問題点は多くあったものの、ゲームシステムの完成に向けての足がかりを掴み、一つの大きな転換期を迎えた重要な時期であった。

3.成熟期
考案された指示システムを活かし、ゲームとしてどう一般化するかが大きな課題であった。ゲーム画面としては、やはり初期の後方視点の方が迫力があって良い。
しかし、指示システムには荒削りだが大きな可能性を感じ、うまく活かしたい。そこで生まれたのがサブウインドウシステムである。仲間隊員の状態をサブウインドウで確認しつつ、ビジュアル的な臨場感を失わないようにするという、これまでの2つのタイプを合体させたようなシステムであった。最初にサブウインドウが入った画面でプレイした時に、とにかく楽しくて、意味もなくサブウインドウに大地を映して楽しんでいた事を思い出す。

4.完成期
その後も、さまざまな改良を加え、現在の形に到達した。サブウインドウも、プレイに邪魔にならないように、左上に移動している。指示画面も、シンプルで、視覚的にもわかりやすくなるように改良を加えて行った。
今でも、隊員達のボイスが入った時の感激は忘れられない。NPC(プレイヤーが操作できず、AIで動くキャラクター)への感情移入は、飛躍的に高まり、キャラクター達が私の中で生き生きと動き回り始めたのである。

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